うららかな日差しに桜やハナミズキが咲き誇り、風景が色づく春の訪れを感じたら、装いにも季節感を加えてみましょう。
全身を一新する必要はありません。
鮮やかな色のワンアイテムを加えるだけで、印象はがらりと変わります。
鏡のなかに昨日までとは違う自分を見つけたら、ワクワクした気持ちになるはずです。
今回は、シニア女性を対象にしたスタイリストとして活躍するジョニー・カワサキ氏にアドバイスを受けながら、春のワンアイテムの投入により変身していく様子をご紹介します。
ジョニー・カワサキ
パーソナルスタイリスト。外資系アパレルに20年間勤め、銀座や青山の路面店のフロアーマネージャーを務める。現在、予約制でパーソナル・スタイリングを行う『えがお洋品店』(東京・巣鴨)のゼネラルマネージャーとして活躍。シニア女性への的確なスタイリングが好評。
クローゼットのなかは、落ち着きのあるくすんだ色の洋服ばかりという方も多いかもしれません。
今回モデルをお願いした72歳の女性も、
「派手な色は人の視線が気になるので、無難な色の洋服ばかりを買ってしまう」
ことがお悩みです。その日はデニムのパンツと、娘さんが買ってくれた、お尻まで隠れる丈の白いレースのブラウスを着用していました。
年齢を重ねると肌のトーンが落ち、顔色がくすみがちになります。
そのため、トップスにベージュや生成り、グレイッシュな色など癒し系の「ほっこり色」をもってくると、くすみの二重奏になる可能性があります。
ほっこり色は、スカートやパンツなどのボトムスで楽しみましょう。
イメージチェンジのためにワンアイテムを取り入れるなら、鮮やかな色彩のトレンドカラーがおすすめです。
前述のほっこり色はもちろん、グレーやチャコールなどの落ち着いたトーンのくすみ色は上品でおしゃれではあるものの、顔色もくすんで見えてしまい、年齢よりも老けて見えてしまう危険があります。
ショッピングモールなどでアパレルショップを何軒か見て、「最近、この色をよく目にするわね」 と感じた色が、トレンドカラーです。 分かりにくいと感じたら、アパレルショップのスタッフに尋ねれば、教えてくれるはずです。
今回、カワサキ氏がおすすめしたのは、ビビットなグリーンのショート丈のセーターです。
鮮やかな色を顔周りに持ってくると、顔色を明るく見せられます。
カワサキ氏は、
「グリーンはここ数年の流行色のため、今っぽいおしゃれ感もあります」
とアドバイスをしてくれました。
モデルの女性は鮮やかなグリーンのセーターを前に、
「こんな色、着たことがないです」
とはじめは不安そうな様子でしたが、着替えて鏡に向かうと晴れやかな笑顔になりました。
「グリーンが似合うなんて、思ってもみなかった!」
と、さまざまなポーズを取ってご自身の変化を楽しんでいる様子です。心が弾んでいる様子が伝わり、周囲の雰囲気まで明るくなりました。
Vネックに襟がついた、お洒落なデザインのショート丈のセーターは、腰回りが半分隠れるため、ヒップラインが綺麗に見えます。また、Vネックによって首もとがスッキリ見える効果もあります。
カワサキ氏は
「どうしても腰回りを隠したい人は全部隠してOKです。その代わり、首回りや手首、足首など、ほっそり見える部分を出しましょう」
とアドバイスします。
アドバイスを受け、モデルの女性は袖をまくって手首を出してみました。するとそれだけで、カワサキ氏の言葉どおり、スリムに見えて若々しい印象に。
ジーンズのポケットに手を入れるポーズも決まり、元気はつらつなイメージに変身しました。
ご本人も、
「かっこいいシャツスタイルだと、元気が出て姿勢まで良くなったみたい!」
と、とても満足そうです。
足元の靴を変えるだけで、全身の印象はガラリと変わります。
シニア世代には、歩きやすい ウォーキングシューズが人気ですが、今回、カワサキ氏が推すのはスエード素材の短いブーツ(ワラビーブーツ)です。
若い人も履いている靴のため、履くと若々しい印象を与えられます。歩きやすいのも、嬉しいポイントです。
シニア女性のスタイリスト、カワサキ氏が語る、スタイリングのコツは次の2点です。
●年齢を重ねたからこそ生じるメリットを活かす
●洋服選びはメイクで気持ちを高めてから行う
シニア女性のスタイリングのコツを、それぞれみていきましょう。
スタイリングは、年齢を重ねたからこそ生じるメリットを活かすことが大切です。年齢を重ねると体型が変化し、お肌も変わってきます。
デメリットを嘆く人が多いですが、 実は メリットでもあります。たとえば、 鎖骨周りが痩せてしまったら、シャツのボタンを2つ開けても肉感を感じさせず、すっきりと素敵に見えるでしょう。
また、麻100%のシャツなど、少し上質の素材を着ることで、若い人には出せない品格が漂います。
一方、レースなどの可愛いアイテムを取り入れる際、年齢を重ねるほどその分量を少なくしていくのがコツです。年齢を理由に可愛いアイテムを諦める必要はまったくありませんが、「可愛い」全開のスタイリングは、やや危険です。
えがお洋品店でメイクをして髪を整え新しい服に着替えると、最初は口数が少なかった方が明るく話し始めるそうです。杖をついてきた方の腰がピンと伸び、杖を忘れて帰ろうとしたこともあったといいます。
地味で無難な服装は、見た目と心の老けを加速させてしまう可能性があるため、注意が必要です。その方らしい美しい装いは、心身を元気にします。まずはいつもと違う1つのアイテムにチャレンジすることで、気分が上がり、若々しく元気になるはずです。
気軽に新しいアイテムを1つ取り入れるだけで、印象はガラリと変わり、鏡に映る新しい自分にワクワクするものです。
ワンアイテムは、トレンドカラーのものを選ぶとよいでしょう。また、着こなしで遊んでみるのも、新しい自分に出会うためにおすすめの方法です。
ぜひ、今回ご紹介したコツを参考に、ワンアイテムを投入して、普段とは違う自分に変身してみてください。