ステキなヒント
15. 品の良さは質感で決まる
素敵なあの人、着ているものは同じでも何が違うの?
同じようなTシャツなのに、何故かあの人は品が良い。そんな風に思ったことはありませんか?
その人はきっと「質感」にこだわりを持っています。
質感の良いものとは、高級なものを買えばいいのか、それとも審美眼によるものなのか。
その一つの答えを説き明かすヒントを探っていきましょう。
Tシャツ一枚をみても、近くのモールで買える1000円以内のものもあれば、1万円を超えるものもあり、どう違うのか疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
もちろん繊維そのものの産地や縫製など色々なことで金額は決まりますが、小難しい話は時に純粋なファッションの楽しさを半減させてしまいかねないので、今回は3つのプライスポイントで説明をしていきます。
ロープライス
ここではTシャツを例にしたいと思います。先に述べたような1000円前後で近くのモールやファストファッションのお店で購入できるようなものです。
昨今、大手のモールやスーパーに置いてあるようなものは安価でもかなり優秀です。
一昔前のように一度洗濯をしたら縮んでしまったり、色抜けしたり、型崩れが起きることは稀で、きちんと洋服としての責務を果たしてくれます。細かく見れば縫製が雑な箇所や糸処理が甘いものもありますが、値段を考えれば大したものだと思います。
こういった商品は、どのような世代、年収、年齢にもある程度受け入れられるように常に平均値をとることが多く、そのため着た時のフィット感も全ての年齢の平均値になっていることが多いように思います。
本来、年齢とともに身体のシルエットは変化するものなので、20代向けのパターンと50代向けでは明らかにボディが変わるはずですが、誰が着てもそれなりに見える形というのはベターであってベストではないとも言えるわけです。
また、素材そのものは悪いわけではないですが、薄手のものはよれて見えたり厚手のものはゴワゴワしたりと洋服のテクスチャー(質感)が見た目にも伝わってくるのがロープライス。
よれていたり、ゴワゴワしているということは粗野に見えるということです。品の良さからは遠ざかると肝に銘じましょう。
写真や、スチームがしっかり当てられて飾られた店頭ではとてもよく見えても、一度洗濯をするとがっかりしてしまうこともあります。
そのため、インナーではなく1枚で着れるようなものは避けた方が無難です。
ミドルプライス
中くらいの値段設定は5000円から8000円くらいのものをここでは指します。
真ん中に当たる価格帯はロープライスと比べた時に大きく変わるのが着心地の良さです。
また、素材の価格が販売価格にそのまま出るのもこのプライスポイントの特徴です。
いわゆる超長綿を使っていたり、強捻で生地の密度が高い物など、直接肌に当たる素材そのものが気持ちの良いものはそれなりの価格になるものです。
この辺りの価格帯になってくると、見た目にもその素材の良さが伝わりやすく、品性を感じられる準備ができてきます。
表面の毛羽の立ち方がソフトで思わず触りたくなる、しっとりとしたぬめり感があり適度な重みでシワが寄らない、自然な光沢感があり自分自身の顔を明るく照らしてくれる、などがロープライスと比べると明確に違いが出てきます。
またミドルプライスのTシャツはペルソナを設定しているブランドが多く、年齢層や体型に合わせてパターンを引いているところが増えてきます。
品の良さは、育ちの良さを感じさせることです。
あつらえたような身体にあったサイズやフィットのものを着ていることで品が良く見えるのです。
そのため、自分の年齢と体型に合わせたブランドを選定することで(キャリア風が好きなのか?カジュアルなのかモードなのか?)なりたい自分のイメージに近づくことができるため、サイズやフィット感が適正で品のある着こなしをすることができます。
ミドルプライスとハイプライスの違いは何なのでしょうか。
ハイプライス
Tシャツが1万円を超えてくると高級品というイメージになってくる方が多いのではないでしょうか。
ミドルプライスとの違いがわからずに悩んでしまう方も多いのがこのハイプライスのゾーン。
そもそもこの価格帯がなぜ高いのかというと、素材だけが理由ではありません。
このTシャツをデザインし、パターンを引き実際に商品として作り上げるまでのデザイナー(ブランド)の技術料が含まれていることを理解しなくてはならないのです。
ハイブランドのTシャツなどは5-6万円することもザラですが、これはそのメゾンへの信頼にお金を払っているということに他なりません。
例えば、あなたが美術商だとして、ピカソやモネにはたくさんのお金をかけても手に入れたいと思う反面、新しいアーティストに大きなお金を払うのは躊躇してしまうのではないでしょうか。
このようにブランド価値というものは、ある一定の人に認知され、その良さを確実に承認されることへの投資なのだと思っています。
話が少しそれましたが、1万円以上のTシャツにはそのブランドやデザイナーのフィロソフィーが詰まっています。
ブランドのイメージするコレクションのストーリーを通して、自分なりに解釈して着こなすことは、自然と立ち居振る舞いを変化させることとなり、とどのつまりそれが品の良さに変換される、ということなのです。
(逆説的になりますが、何もわからずにただ高いものを着ているだけでは、どんなに良いものでも決して品が良く映ることはないということも注釈しておきます。)
品の良さは、質感で決まる。
けれども滲み出るようなグレイスフルな品格は洋服への愛情や、ストーリーを感じ取り楽しむその心から生まれてきます。エレガントは一日にしてならず。僕も胸に刻んでおきます。
ジョニー・カワサキ
顧客のワードローブに魅力を高めるアイテムを足すことを得意としているファッションスタイリスト。20年以上におよぶ外資系アパレル勤務で培われた知識とセンスをもとにしたアドバイスには定評がある。