ステキなヒント
シニア向けビジネスに参入したい方へ [ 1 ]
なぜ、今、シニア世代なのか
私たちは2014年に東京・巣鴨でシニア世代専門の写真館「えがお写真館」を立ち上げ、その後、『えがお美容室』、『えがお洋品店(セレクトショップ)』、『えがお爪工房(ネイルサロン)』、『えがお美癒堂(エステサロン)』、『えがおアイラッシュbyえがお美容室(アイラッシュサロン)』といったシニア向けの店舗を展開してきました。
これらの事業は、従来のシニア像にとらわれることなく、「歳を重ねることが素敵だと感じ、生涯おしゃれを楽しみ続けたい」という新しいライフスタイルを提案するものです。
しかし、世の中を見渡すと、シニア世代向けのサービス、特に私たちが提供しているような美容をはじめとする「娯楽サービス」は、まだまだ充実しているとは言い難いのが現状です。
日本では今後、シニア世代がますます増えていきます。その中で、娯楽サービスの充実はますます重要になると考えています。今回は、この点について考えてみたいと思います。
シニア市場の現状
まずは、現在の日本を取り巻くシニア市場を見てみましょう。
日本のシニア人口
現在、日本では65歳以上の高齢者人口は3,623万人に達し、総人口の29.1%を占めています。さらに50歳以上の人口は6,166万人で、人口の約半分の49.5%となっています。(2023年総務省統計局人口推計)今後も高齢者人口の増加が見込まれ、シニア市場の重要性はますます高まっていくことでしょう。
シニア向けの生活産業の可能性
2025年にはシニア市場が100兆円を超えると予測されています。一般的に「シニア市場」と聞くと医療や介護関連のイメージが強いですが、実際には「医療・医薬産業」、「介護産業」を合わせて約50兆円の規模にとどまります。
残りの半分は「生活産業」の分野であり、私たちが運営する写真館や美容室などもこのカテゴリーに含まれています。
ただ、この生活産業の中で提供されている商品やサービスのほとんどは、マス(大衆)向けのもので、シニア世代に向けた明確なターゲティングされたものは、ほんの一握りです。
特に私たちが行なっている写真館や美容室、セレクトショップ、ネイルサロン、エステティックサロン、アイラッシュサロンといった「娯楽サービス」に関していえば、シニア世代向けに提供されているものは、ほとんど見かけません。
つまり、シニア向けの生活産業は、医療・介護分野と同規模の市場を持ちながら、ターゲティングはまだまだ進んでおらず、十分に開拓されていない領域なのです。
逆に言えば、シニア世代に向けてより明確なターゲティングを行うことができれば、生活産業分野でのシェア獲得ができると考えています。
50代以上の保有する金融資産
さらには、世代別の金融資産についてみていきます。
2019年時点で、日本の金融資産は1903兆円ありますが、そのうちの81.7%にあたる1554兆円を50代以上の方々が保有しています。
このような状況をみるに、50代以上に向けた商品やサービスを充実させ、商品の購入やサービスの体験機会を増やしていくことが重要になってくるでしょう。
そして、それが日本経済の活性化につながる可能性を秘めていると考えてます。
シニア世代向けサービスは、まだまだ少ない
では、人口も多く、市場開拓の余地もあり、金融資産も保有している世代であるにもかかわらず、なぜシニア世代に向けてのサービスがまだまだ少ない状況なのでしょうか?
えがお写真館の体験例
私たちが実際に経験した例として、写真館のケースを紹介します。
私たちは、最初にシニア世代専門のえがお写真館を立ち上げ、徐々にメディアなどで注目されるようになりました。
この時期、私たちのことを真似する写真館が少なからず登場してきました。
ただし、「シニアプラン」をつくり、内容のみを真似されるケースがほとんどで、店舗のコンセプトからまるごと真似されることは稀でした。
そのため、完全なライバルになる店舗や企業は、あまり見当たりません。
なぜライバルが現れないかというと、既存店の多くは既にその地域に根付いていて、幅広い世代の既存客との繋がりがあるためです。
多くの写真館は「子供の写真」を軸にターゲティングをしているため、店舗全体のコンセプトをシニア向けにシフトチェンジすることは難しい状況です。
また、大手企業も市場が十分に成熟していない段階では参入しづらい傾向にあります。
美容室やセレクトショップ、ネイルサロン、エステティックサロンなどの他の店舗に関しても、若い世代をターゲットに運営している店舗が多いため、シニア世代に向けて舵を切ることが難しいのだと思います。
新規参入する店舗に関しては、最初から真似をしようとすると、リソースが足りず(特に人材)、軌道に乗る前に撤退してしまう場合が多いようです。
私たちの現状と今後の展開
私たちはその間に「写真館事業」にとどまらず、「シニア世代」というターゲットにフォーカスし、美容室、セレクトショップ、ネイルサロン、エステティックサロン、アイラッシュサロンなど、トータルビューティの領域へと事業を拡大してきました。
その結果、他社が模倣しづらいビジネスモデルを築いていくことになります。
競争相手がいるメリット・デメリット
競争相手がいないと、ビジネスをやりやすいと思われるかもしませんが、自ら需要の喚起を積極的に行わなければなりません。ブルーオーシャンのように見える市場でも、消費者の認知がなければ集客が難しく、むしろ競争の激しいレッドオーシャンよりも大変な側面があります。
メリット・デメリットどちらも共通することですが、競合他社がほぼいないことで、自分たちのやり方がこの分野におけるスタンダードとなりルールとなるメリットはあります。
しかし、市場を拡大するには競争は必須であり、競争がないことで波及力が乏しくなり、世の中へ商品やサービスの認知が定着するスピードが遅くなってしまうデメリットもあります。
前例がないからこそ、常に試行錯誤の連続です。
ビジネスをどの方向に広げていくか
ビジネスを拡大する際、まず既存事業を広げる選択をする企業が多いと思います。
その理由として、既存のリソースや蓄積したノウハウを活かしやすいことや、新規事業に比べてリスクが少ないことが挙げられます。
しかし、私たちは「写真館事業」を広げるのではなく、新たに「美容室事業」を展開する決断をしました。
しかも、美容室の経営は未経験であり、まったく新しい挑戦でした。(ちなみに、写真館事業もゼロからのスタートでした。)
結果として、その選択は正しかったのですが、なぜ異なる事業を展開していったのか。
その背景については、次回お話ししたいと思います。
今後の展望
これからの日本社会を考えると、シニア世代に向けたビジネスは今後さらに拡大し、市場を広げる必要性がますます高まると感じています。
私たちはシニア市場の成長に伴い、サービスの充実や商品開発を通じて新たなニーズを創出し、より良い価値を提供していきたいと考えています。
▼ この記事を書いた人
太田 明良(おおた あきよし)
株式会社サンクリエーション 代表取締役
2014年株式会社サンクリエーションを創業。同年、東京・巣鴨にシニア世代専門『えがお写真館』を開業。その後も50代以上の女性を対象とした『えがお美容室』、『えがお洋品店(セレクトショップ)』、『えがお爪工房(ネイルサロン)』、『えがお美癒堂(エステティックサロン) 』を開業。
一般向けのサービス・コンテンツだけではなく、現在では業種を問わずシニア世代に対してビジネス展開をしている企業を中心に、多くの協業のオファーを受け、企画・監修・制作・プロデュースや企業アドバイザーなど多岐にわたって活動の幅を広げている。
こちらでEGAOの立ち上げからの歴史を描いた4コマ漫画を掲載しています。
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