ステキなヒント

2025年03月10日2025年04月01日
ビジネス

シニア向けビジネスに参入したい方へ [ 3 ]

えがお美容室の移転とトータルビューティサロンの誕生

2019年の春、時代が平成から令和へと変わろうとしている時期に、えがお美容室はより広い場所を求め、巣鴨地蔵通り商店街へと移転しました。
美容室を立ち上げてわずか1年。初月の売上がわずか15万円だった頃には想像もできなかった決断です。
当初2席のみだった美容室は、7席へと大幅増加。偶然にも4名の美容師が見つかり、人員問題もクリアしました。
しかし、この移転に際して考えていたのは、美容室単体の運営ではなく、シニア世代の方々がトータルで綺麗になれる場所を作ることでした。

 

おしゃれをする際、髪型だけを意識する人はほとんどいません。メイクやファッションなど、総合的な視点でおしゃれを考えるのが一般的です。

 

そこで、美容室・セレクトショップ・ネイルサロンの3店舗がワンフロアで一体となったトータルビューティサロンを開設しました。

 

事前調査と美容全般へのニーズ

これは大胆な決断でしたが、事前のアンケート調査により、ヘアケアに年間6万円程度費やす方は、美容全般に30万円ほどかける傾向があることが分かりました。

 

ヘア以外にこれだけの費用をかけているのであれば、その部分も、わたしたちでサービスを提供していこうと考えました。
(この考えは、のちにエステティックサロンやアイラッシュサロンの開業にも繋がります。)

 

シニア世代のニーズを反映したサービス

また、若い世代にとって「お店を選ぶこと」は楽しみの一つですが、シニア世代にとってはなるべく用事を一箇所で済ませたいというニーズがあります。何店舗も巡るのは、体力的にも大変であったり、一箇所で落ち着いて買い物をしたいと言った背景もあるようです。
そのような要望に応える意味でも、トータルビューティサロンはシニア世代に相応しいサロンと考えました。

 

2019年4月、「えがお美容室」「えがお洋品店(セレクトショップ)」「えがお爪工房(ネイルサロン)」の3店舗が一体となったトータルビューティサロンが誕生しました。

 

しかし、順風満帆とはいきませんでした。

 

美容室の課題

まず美容室ですが、徐々に客数が増えていき、リピーターも確実に増えていましたが、席数を3倍以上に増やしたため、予約の空きが目立ちました。
今では予約が取りづらい店舗となり、施術後に次回予約を取るお客様が増えましたが、当時は不安を感じました。

 

また、立ち上げよりいる美容師に対して言ったのと同様に、新たに加わった4人の美容師にも、「今抱えているお客様は連れてこなくていい」と伝えました。これは「シニア世代専門美容室」というコンセプトを守るためです。

 

しかし、4人全員が顧客ゼロというのは非常に厳しい状況でした。

 

2席の店舗で始めた際も時間を経るごとに、口コミを通してお客様が徐々にご来店してくださる経験をしていたため、美容室のことを知っていただければコンセプトも受け入れられるものだと確信していましたが、まだまだ顧客が定着していない時期は辛い時期でした。

 

セレクトショップ「えがお洋品店」の挑戦

洋服販売をすることは初めての経験だったため、知人のファッションプロデューサーに協力を仰ぎ、「えがお洋品店」を開店しました。

 

しかし、開店当初はスタッフが1人もいませんでした。
スタッフをどうやって採用しようかと考えてはいましたが、売上の見通しが立たない中で、スタッフの採用にも慎重になりました。

 

美容師の接客

 

そこで考えたのが、「美容師が接客する」という方法です。

 

この3店舗はすべてワンフロアにありましたが、ビルの2階に位置していたため、開店当初は通りがかりのお客様が訪れる可能性は低いと考えていました。

 

そのため、主なお客様は美容室に来店された方々になることが予想されました。
担当美容師が接客することで、お客様にとって安心して買い物ができる環境を作れると考えました。

 

もちろん美容師ですから、専門のアパレルスタッフには洋服に対する知識は敵いません。
しかし、お客様と信頼関係を築けているため、初対面のアパレルスタッフよりも似合う洋服、オススメの洋服に関してアドバイスをしてあげることができるのではないかと考えました。

 

また、髪型が変わると似合う洋服も変わります。
カット後は新しい服が欲しくなる絶好のタイミングでもあります。

 

はじめは美容師も戸惑っていましたが、結果的に多くのお客様に喜んでいただき、中には10万円以上お買い上げいただく方もいらっしゃいました。

 

現在では洋品店にも専属スタッフが在籍していますが、美容師が施術中に新作の商品についてお話しし、スムーズに洋品店へ送客する流れをつくっているため、洋品店に対する美容師の重要さは今も変わっていません。

 

予算もかけづらい状況時は、常識にとらわれない判断も必要だと思います。
いかに常識を疑って、いかに知恵を振り絞るかは、今でも行なっています。

 

ネイルサロン「えがお爪工房」の苦戦

ネイルサロンであるえがお爪工房は、開店当初、利用されるお客様が全くいませんでした。

 

美容室にいらっしゃったお客様にも積極的に声をかけていましたが反応は今ひとつ。
そもそも髪を切りにいらっしゃるため、それ以外のことを進めてもなかなか反応はしづらいものです。

 

そこで思い切ったことをすることにいたしました。

 

ネイル施術への心理的ハードル

問題の根本を考えた結果、ネイル施術に対価を払うことへの抵抗があるのではないかと仮説を立てました。

 

シニア世代の方は若い世代の方に比べてネイルサロンに行く機会がないことが予想できます。
ということは、ネイルの施術をしたことがあるかたも少ないはず。当然対価を払う経験も少ないです。

 

ネイルに対して施術料金を払うことを経験してくれれば、心のハードルがぐんと下がるのではないかと考えたのです。

 

たとえば今の時代、コンビニやスーパーで水やお茶を買うのは当たり前です。
しかし、30〜40年前までは、わざわざお金を払って水やお茶を買うなんて信じられないと思う方が大半だったのではないでしょうか。
それと同じことだと思いました。

 

片手を無料で施術

まず、美容室のお客様にカラーなどの待ち時間の最中に、ネイリストが席まで行き、片手のみ無料でネイルの施術をさせていただきました。
待ち時間に無料での施術なら、断る方も少なかったです。

 

そして、もう片方の手の施術を希望する方には500円で提供しました。
たった500円ですが、「ネイル施術にお金を払う」という経験をしてもらうことで、心理的ハードルを下げることに成功しました。

 

このように地道に美容室のお客様にお声がけをして、ネイルの施術を続けていきました。
その結果、少しずつではありますが、えがお爪工房に足を運んでくださるお客様が増えていきました。

 

新たな市場を切り拓く

 

シニア世代向けのビューティサービスは、まだ認知度が低い分野です。
しかし、年齢を重ねても美しくありたいという気持ちは確実に存在し、今後は間違いなくスタンダードになると信じています。

 

新しいサービスを始める際、すぐに成功することは稀です。
思い通りに進まないことや、想像していなかった問題が次々と発生します。

 

しかし、リスクを冒してでも一歩を踏み出し、トライアンドエラーを重ねながら最適化することが、ビジネスを前に進めるためには不可欠です。

 

 

▼ この記事を書いた人

太田明良

太田 明良(おおた あきよし)

株式会社サンクリエーション 代表取締役

2014年株式会社サンクリエーションを創業。同年、東京・巣鴨にシニア世代専門『えがお写真館』を開業。その後も50代以上の女性を対象とした『えがお美容室』、『えがお洋品店(セレクトショップ)』、『えがお爪工房(ネイルサロン)』、『えがお美癒堂(エステティックサロン) 』を開業。
一般向けのサービス・コンテンツだけではなく、現在では業種を問わずシニア世代に対してビジネス展開をしている企業を中心に、多くの協業のオファーを受け、企画・監修・制作・プロデュースや企業アドバイザーなど多岐にわたって活動の幅を広げている。

 

こちらでEGAOの立ち上げからの歴史を描いた4コマ漫画を掲載しています。

 

[Instagram]#ota.akiyoshi  https://www.instagram.com/ota.akiyoshi/?locale=ja_JP

 

[TikTok]@ota_akiyoshi  https://www.tiktok.com/@ota_akiyoshi

 

 

 

人気記事TOP5